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「シチリアに行ってみたいな。」 ツアーではじめてイタリアにやってきて、主要な都市を巡り、ミラノのボクのところで滞在を延長した両親に、他に行きたいところを訪ねてみると、迷いもなくこう答えた。 その2年前、シチリア出身の親友とその婚約者を迎えて、はじめての外国人の訪問に戸惑いながらも受け入れてくれた両親が、ボクもしばしば訪れている彼らの故郷に興味を持つのは至極当然とも言える。 まるで自分の家にいるように落ち着いて過ごせたのよ、と、実家で過ごした数日間を東京や京都を観光したのと同じように並べて話すのには、感謝の言葉と思って少し気恥ずかしさを感じていたのだけれど、それは両親を迎えてくれた彼らの家族に会ってみて払拭された。 食事の時にも最初からはナイフとフォークを並べず、日本のスタイルでもてなしたように、シチリアの地元の普段のやり方と料理は、何もかも珍しく、暖かい。 庭のレモンをもいでかじってみるのも、大きな松ぼっくりを燃料にした炭火直焼きのアーティチョークも、中のウイキョウの葉が独特の香りのソーセージも、そしてなにより、通じる言葉が全くない両親同士が熱心に話しかけてくれているのが、心もとない通訳の自分にもうれしくて仕方がない。 イタリアの伝統である嫁入り道具の手編みのレースの数十年前の花嫁衣装に熱心に魅入っては目を輝かせていた母。 美しい海の色に、子供の頃の思い出を重ねていた父。 頬にお別れにキスをされた時、母の目に光った涙が、どんな言葉にも代えてこの喜びを伝えた。 どうしてボクがイタリアにとどまっているのか、自分でもうまく説明できなかったものがこうして伝わった今、電話で話すたび、あの時行ったところがテレビに出ていた、雑誌にあの時の料理のレシピが載っている、と、両親のイタリアへの興味は尽きない。 イタリアに住むようになってから教えてもらった家族の大切さ、こうして自分自身の家族の距離もぐっと縮まった気がするのである。 これはその日、アーティーチョークの炭火焼を準備しているお父さん。 陽の強さと、コッポラと呼ばれるこの帽子が、とてもシチリアンな一枚である。
by hsworkshop
| 2006-03-12 22:23
| g-h-i
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Comments(2)
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from オイラ陽気なイタロ・ジャ..
at 2006-03-14 00:37
タイトル : シチリアで見た家族の絆
「シチリアに行ってみたいな。」 ツアーではじめてイタリアにやってきて、主要な都市を巡り、ミラノのボクのところで滞在を延長した両親に、他に行きたいところを訪ねてみると、迷いもなくこう答えた。 その2年前、シチリア出身の親友とその婚約者... more
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あかね
at 2006-03-18 05:48
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ほろっときました。
近すぎるとわからない親のありがたみと大切さ。 その気持ちをいつか伝えられたらいいですね。
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hsworkshop at 2006-03-19 05:59
>あかねさん
近すぎるとわからない、気がつかない、って本当にそうだと思います。 マザコン、とネガティブなくらいの結びつきもちょっと考えものですが、日本にいたら、いつでもかえれるから、と、ちっとも実家に帰らないようなドライな感じだったのが、今の方が気にかけるようにもなって、大切な事を習ったのか、単に年を重ねたせいなのか(笑)、自分が成長したのであればうれしいと思っています。
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