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Echo

Echo_f0050161_12355717.jpg

~ その日 僕は東京の西の方を歩いていた ~

よく晴れた春先の山中は
長い冬の静かな重さに耐えてきたからか
靴の裏に確かな余韻を残し 足跡だけが僕の後方に続いていく

取り巻く空気は もう春のそれであったが
つま先だけはいつまでたっても冷たかった

暖かな日差しが僕を包み込んでいく

ある時 道は 
前に広がっているだけではなく
下ることもできれば 引き返すこともできた

昔の哲学者のように歩きながら考えていた時 突然降ってきた 山からの音


あり     が  と     ーーーーーーーーーーーーーーーう


ま ーーーーーーーーーーーた ーーーーーーーーねーーー


す ーーーーき ーーーーーーだ ーーーーーーーーーーーーーーーーー っ


山から聞こえてきた音は 
いつかの日にか 昔 僕が放った言葉だった
車のことを “ブーブー” と言ってから
僕は沢山の音を 
沢山の対象物に向けて発してきた


大好きな友達に “遊ぼう” と何度も言った
両親には “いただきます” を
恋人には “愛している” と繰り返す

成長してゆく中で 過ちを避けては通れない 
そんなときはいつも “ごめんなさい” と


少し蒸し暑くなってきて僕は上着を脱いだ
腰に上着を固く結んでから深呼吸をして また足を進めた
落ちている木の枝を踏むと ポキポキッと鳴った
それがとっても 気持ちよくて
見つけては その上を歩いた
枝の気持ちはつゆ知らず ただがむしゃらに踏んで歩いてきた

遠くの山には ふるさとに住む仲間の笑顔が浮かび
額から落ちる汗は 通り過ぎていった思い出が映り 記憶と共に流れていった

歩きながらおにぎりを食べていると
中に光るものが見えた
しょうゆ味のカツオブシが光っている
なんだか沢山キラキラしいると思ったら それは雨でぬれていた

そのうちに それが ぽつりぽつりと増えてきて大きくなり 僕は叩かれた



い  な          く  な                        れ 


    か     えっ        て       く       る   な

 
ば                                                か


も   う                           く   る         な




冷たい雨と共に 
これまでに僕が言ってきた言葉が 降ってきて突き刺さって 
いたくて いたくて 倒れこむ

自分に向かった言葉でも
誰かに向かった言葉でも
すべての言葉が 主語をなくした形で返ってくる

投げてすぐに戻ってくるブーメランがあれば
昔 どこかの空に消えた風船さえも 
時を経て戻ってくるし 返ってくる

何も考えずに 汚い言葉を使ったら
自分がどんどん汚れてしまう

だから
気持ちを込めて 温かな言葉を伝えよう     きっと みんなが 楽しくなるから


これからは
温かい言葉を 目の前の人に 贈ってゆこうと思う

ありがとう
僕たちは ありがとうから はじまってゆく



~ その日 僕は東京の西の方を歩いていた ~





From Hantama to you.
Photo by yorizo,written by ibukijohn. This is a message of Hantama.
by john-yorizo | 2006-03-06 12:39 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from Hantamaの頭の中は at 2006-03-06 12:41
タイトル : Echo
~ その日 僕は東京の西の方を歩いていた ~ よく晴れた春先の山中は 長い冬の静かな重さに耐えてきたからか 靴の裏に確かな余韻を残し 足跡だけが僕の後方に続いていく 取り巻く空気は もう春のそれであったが つま先だけはいつまでたっても冷たかった 暖かな日差しが僕を包み込んでいく ある時 道は  前に広がっているだけではなく 下ることもできれば 引き返すこともできた 昔の哲学者のように歩きながら考えていた時 突然降ってきた 山からの音 あり     ...... more
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