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妹と 二人だけで海に行った。
今までそんなに仲良くしてきた兄妹ではない。 なにかとケンカをしたし、おたがいにそっぽを向いたまま 大人になってしまったような気がする。 さしたる会話もせずに 海へ着いた。 ただよう汐の香りに ふと 幼い頃を思い出す。 山国育ちの僕と妹にとって 年に一度だけ 連れて行ってもらえる 海水浴は特別だった。 その日ばかりはケンカせずに無邪気に二人で遊んでいたものだ。 僕が昔の記憶をひっぱり出していると 「わたし、今度 結婚するんだ」と妹が唐突に言った。 え? どう答えていいかわからず、妹の顔を見た。 妹はそっと 静かに泣いていた。 僕と全く似ていない、大きな瞳から一粒の涙がこぼれた。 妹も また何かを思い出していたのかもしれない。 遠くから海鳥たちの声が近づいてくる。 二人で空をあおいだ。 変わらない何か。変わっていく何か。 海鳥たちがいきおいよく 僕らの近くを通りすぎていく。 「おめでとう」 自然に そのことばが僕の口から出ていた。
by photo-contest
| 2006-03-23 08:25
| 入選
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